四段昇段審査レポート

合気道における初心者指導法     合気道東湖塾 齋藤晋弥

合気道指導に於いて特に初心者に心を砕くべきは3つあると考えます。一つは怪我をしない、させないこと。一つは基礎練習を積ませること。一つは心を導くこと。

怪我をしないことは、継続するうえで絶対条件ですが、初心者の場合、覚えた技を試したくなるもの。この際事故が多く、相手に怪我をさせてしまうことがあります。怪我をした側は言わずもがなですが、怪我をさせた側も合気道の稽古に恐れを抱き、その先にある探究や研鑚と言った武道本来の楽しみを味わうことが出来なくなってしまいます。先ずはこれを防ぐためにも、受け身の稽古は勿論、投げ技に限らず抑え技であっても、指導者は稽古中に細心の注意を払うべきと考えます。

基礎練習の要諦は、体が覚えるまで反復して練習することです。準備運動から始まり、受け身,膝行、転換動作などの捌きは歩くことと同じくらい自然に行えるまで反復して練習することが大切です。何故ならここで、投げや抑えに必要な足腰、体幹を鍛え、柔らかい受け身に必要な柔軟性を作る必要があるからです。基礎をおざなりに指導すれば、指導を受けたものが先々での怪我や技の未完成に悩むことになります

さらに一番重要なことは、心を鍛え導くことと考えます。武道の基本は心・技・体鍛える事。体や技は日々の稽古の中で鍛えてゆくことが出来ますが事、心については個人の鍛錬に任せてしまうのが常であると思います。私はこれが間違いであると考えています。なぜなら初心者は心の鍛え方がわからないからです。

合気道の技は過程にある包丁であると考えます。これは素材を切り分けることが目的の道具ですが、悪意を以って使えば途端に凶器になってしまいます。道具は使い方だけを教えるのではなく、道具の目的を正しく伝え使用させなくてはなりません。初心者に限らず合気道を教える場合は、この心の導き方にこそ重きを置くべきだと私は考えます。開祖は合気道を和の武道であると説かれました。対すれば相和す。これこそが心の鍛錬の原点と心得ます。怒り・憎しみなどの殺気を以って対するのではなく、笑顔で迎える心で対すること。これが私が考える心の導き方です。

以上が私が考える合気道における初心者の指導法です。